初めてのチョーキング
ある日、いつものようにギター小僧(初心者)が彼の数少ない情報源である音楽雑誌(「ミュージック・ライフ」あたりと記憶)をむさぼり読んでいると、そこに気になる記述を見つけた。
「チョーキングとは、ギターの弦を引っ張り上げて音程を上げる、ロックギタリストに必須のテクニックである」という一文である。
小僧「へぇ〜…弦を引っ張り上げてって言うことは右手でこう弦をつまんで…これを上へ引っ張るってこと?…え?メチャメチャ難しいなぁ」
【注1】ギター経験者の皆さんは、ここでギターの弦を張りかえる際に行うあの作業(後で弦が伸びてチューニングが狂う現象を防ぐために、あらかじめ軽く弦を引っ張ってならしておく)をイメージしてもらいたい。
小僧の勘違いはとどまるところを知らず「ギターソロの最中にいちいち弦を(右手で上に)引っ張り上げて音を変えてるなんて、プロのギタリストはそんな難しい技を瞬時にこなしてるのか…やっぱ凄ぇなプロは!」と感心する。
【注2】当時は今みたいな YouTube はおろか DVD ましてやビデオテープすら存在せず、実際に映像で確認することなど不可能だった時代である。
しかし小僧はこうも考える。「そんなことをいちいち繰り返してたらすぐに弦の寿命が尽きてしまうんじゃないか…そうなったらまたすぐ張り替えなきゃいけないし、めちゃくちゃお金がかかりそう……」。
そこで出た結論は「あ、そうか!プロは弦のための出費なんて気にもしないんだな!だってプロなんだもんな!やっぱ凄ぇなプロはっ!」
己の勘違いを勘違いで補強してしまった小僧であった。
その数ヶ月後、友人から借りた「成毛滋のロックギターレッスン(カセットテープ付)」で正しいチョーキングのやり方(図解入り)を目の当たりにした小僧が、その場にヘナヘナとへたり込んでしまうほどの衝撃を受けたのは言うまでもない。

当時グレコのギターを買うとついてきたらしい(前述のように友人から借りたものなので詳しいことは覚えてない)。懇切丁寧に書かれた小冊子(& カセットテープ)で、なにせ小僧にとっては初めての教則本だったこともあり、何から何までが目から鱗だらけの内容であった。
今と違ってネットもなければ教則本もほとんど出版されていない時代で、しかも田舎なので周りに「エレキギター」の弾き方を教えてくれる人もいなかった。そんな環境に加え、彼がもともと思い込みの激しい少年だったが故の悲劇(喜劇?)であった…。
想い出の1曲
Led Zeppelin – Whole Lotta Love(邦題:胸いっぱいの愛を)
- 曲名
- Whole Lotta Love(邦題:胸いっぱいの愛を)
- リリース
- 1969年
- 作詞・作曲
- John Bonham, Willie Dixon, John Paul Jones, Jimmy Page, Robert Plant
- ヴォーカル
- Robert Plant
- ギター
- Jimmy Page
- ベース
- John Paul Jones
- ドラムス
- John Bonham
「成毛滋のロックギターレッスン」に載っていたレッド・ツェッペリンの「胸いっぱいの愛を」のリフは、小僧や小僧の周りでエレキギターを弾いていた誰もが必死に練習したリフである。
たった3音の単音フレーズにときおり5度を重ねたリフは、シンプルながらもスリリングかつ重厚感溢れるサウンドでギター小僧たちの心をわしづかみにした。
あらためて曲を聴くと、2コーラスが終わった後しばらくドラムとパーカッション + SE のみの展開になり、その後ギターソロがドラマチックに挿入される「静から動へ」という曲の構成も見事。
