ラジカセの友人
我が家にステレオ・セットが来たときの話。
シカゴの「ロウダウン」でステレオ録音の洗礼を受けた(※過去記事「初めての洋楽アルバム」参照 )小僧は、さっそく洋楽好きの同級生たちに各自レコードを持参させ、家に招いた。
小僧はさっそく噂のロウダウンを聴かせながら「凄ぇ!」「左と右で音が違う!」と初めてステレオ録音を耳にした友人たちの興奮ぶりを満足げに眺めていた。しかしそのとき一人だけ、部屋の隅で小僧所有のラジカセ(※モノラル)をごそごそイジってる奴がいた。そのうち奴はあろうことかラジカセをフルボリュームにして、こう言い放ったのである。
「こっちのラジカセの方が音が良いなぁ!」
奴に軽い殺意を覚えながらもグッとこらえた小僧は、「おまえさ~うるさいから後で聴けよ~」と苦笑しながら奴のラジカセを取り上げようとした。
しかしそのときラジカセから流れていたポール・サイモンの「母と子の絆」は、モノラルながらも明瞭で確かに「いい音」をしていた。奴の言っていることもまんざら嘘では無いな……と、小僧は渋々ながらも納得せざるを得なかった。そして思い当たる節があった。
実はそのステレオは、小僧の父親が友達の電器屋の店頭で長い間売れ残ってほこりを被っていた東芝の4チャンネルステレオを友達のよしみでタダ同然でブンどってきた代物で、「ステレオなのはいいけど、なんか全体的に音がこもって聞こえるなぁ…」と小僧も常々思っていたのである。
おまけに、4チャンネルなのに父親がケチって別売りのリア・スピーカーを買わなかったせいで、小僧が4チャンネル・サウンドを体験する機会はついぞ巡っては来なかった。
このとき小僧は「物事の見かけにだまされず、本質を見極めることが大事」と言うことを「ラジカセの友人」から学んだのであった。
想い出の1曲
Mother and Child Reunion
- 曲名
- Mother and Child Reunion(邦題:母と子の絆)
- リリース
- 1972
- 作詞・作曲
- Paul Simon
- ヴォーカル
- Paul Simon
- ギター
- Hux Brown
- リズムギター
- Wallace Wilso
- ベース
- Jackie Jackson
- ピアノ
- Larry Knechtel
- オルガン
- Neville Hinds
- ドラムス
- Winston Grennan
- パーカッション
- Denzil Laing
- コーラス
- Cissy Houston, Von Eva Sims, Renelle Stafford, Deirdre Tuck
