哀愁の学園祭 2

叩きつけられたギター

ライブは2日間にわたって開催された。ほとんどはギター小僧たち主体で行われたが、2日目のトリだけ上級生のバンドが出演した。上級生バンドのライブには彼らの同級生が多数応援に訪れたが、その中にはあの「卓球勢」も含まれていた。

実は1日目に卓球勢との話し合いが物別れに終わった理由は、卓球勢の大半が上級生で占められていたため、下級生である小僧たちがもうひとつ強い態度で説得できなかったからであった。しかしライブ途中で業を煮やしたバンドの仲間が文句を言いに行って揉めたせいで、その後小僧たちは卓球勢の上級生たちににらまれることになってしまう。

2日目、卓球勢は卓球に飽きたのかほとんど顔を見せなかったが、上級生バンドのライブには大挙押し寄せるらしいとの情報を耳にした小僧たちは、さらなるトラブルを避けるため、自分たちの演奏が終わると自前の機材を片付けて早々に会場を退散した。

しかし小僧は上級生ライブを見た友人から詳しい話を聞いて、退散すべきでは無かったと激しく後悔した。何故なら、そこで後々まで語り継がれる「事件」が起きたからである。

上級生バンドのメンバーはみないい人で、優しかった。事前に行われたミーティングでも「俺たちはゲストに過ぎないから、おまえらが自由に運営してくれていいよ」と言ってくれた。彼らはマジメで勉強も出来てルックスも良かったので、女子に人気があった。

そんな優等生の彼らが、学園祭のラストステージで思いもよらぬ事をしでかしたのである。

同級生の観客(女子主体)にワーキャー言われながら盛り上がった上級生バンドの最後の曲目は、ザ・フーの「My Generation(マイ・ジェネレーション)」であった。

しかしあろうことか、彼らは演奏の最後にザ・フーの真似をして、各自の楽器(ドラム含む)をメチャメチャに破壊し始めたのである!

言うなればそれは「優等生が起こした思いがけない反乱」であった。

それだけでも事件なのに、散々暴れ回ったあげくに上級生バンドのリーダーが最後に叫んだ言葉が、会場にさらなる衝撃を巻き起こした。

マイクパフォーマンス

「俺たちは〜今日でバンドを解散する!そして〜…」

明日からは、大学受験に専念するっ!!!(絶叫)

その話をライブを見た友人から聞いた小僧は、さすがに耳を疑った。散々暴れた後で「明日から受験勉強します」って…。しかしあとから複数の証言を得て(さすがに本人から直には聞けなかった)、真面目な上級生バンドのひとたちの人となりを思い浮かべると納得せざるを得なかった。

小僧はその歴史的瞬間を自分の目で見ておくべきだったと悔やんだが、全てはあとの祭りであった。

想い出の1曲

My Generation

楽曲データ
曲名
My Generation
リリース
1965年
作詞・作曲
Pete Townshend
ヴォーカル
Roger Daltrey
ギター / コーラス
Pete Townshend
ベース / コーラス
John Entwistle
ドラムス
Keith Moon

ザ・フー初期の代表作。全英チャート2位(全米74位)。

My Generation
収録アルバム:My Generation

1965年リリースのファーストアルバム。全英アルバムチャート5位。「 Bald Headed Woman」ではゲストのジミー・ペイジのリードプレイもちょっとだけ聴くことができる。

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